2013年7月5日金曜日

飛び回るささやき (23/02/2010)

2月21日 
地下鉄御堂筋線動物園前で下りて地上へ,路上に露天が並ぶ。僕はダッシュをしながら「南海の駅あっち?」と聞くと、おっちゃんが笑って「あっちや!」と答えてくれる。南海新今宮駅の3階まで駆け上がると,インドネシア研究家のAさん、染織家のHさんがホームに。バリガムランギータクンチャナ代表のKさんは、改札の外で待っていてくれた。危ない危ない,遅刻寸前,なんとか間に合った。格安チケットを購入してくれていた江美さんにどやされるところだった。 

橋本で乗り換え,単線の線路が山をくねくねと登っていく。極楽橋からはケーブルカー。高野山駅は標高900メートル近い。でも、そんなに寒くなかった。バスで蓮花谷下車。今晩お世話になる宿坊成福院に到着。インドの笛バーンスリー奏者のHさんが昨日から泊まり込んでいて,迎えてくれる。部屋は,別館の豪華な部屋。宿坊とは言うものの,豪華な旅館のよう。去年に引き続き,Gamelan Aidの高野山会議。厳冬の高野山に泊まり込んで,霊性を吸い込んで,時間を気にせず,飲みながらとことん話し合おうという趣旨。あるいは、ということを口実にした宴会。 

早速風呂に入って,からだをほぐそうということに。大阪大学のSさんとGamelan Aidで卒論を書いたAさんもやってきた。まずは、Kさんがやっている足指ほぐし。難しかったが,足の指を全部組み合わせて、あぐらをかくと、悟りが開けそうだった。続いて,僕がやっている背骨の活性化体操。寝転んで背中をそらせて、背骨の一番下を床につけたところから。1センチずつくらいつくところを上にずらしていく。つくところはなるべく1点になるように。首の付け根までゆっくりあげていく。一気に5センチくらい動いてしまったら,行きつ戻りつしながら進めていく。今度は,首からお尻へ。何度か往復させる。なかなかもどかしいが、とても気持ちがいい。 

なんてことをしてると、あっという間に,ご飯の時間。精進料理だが,とても豪勢。名物は、高野豆腐とごま豆腐。気のせいか,去年の方がおいしかったような・・・。それでも、お腹いっぱい。部屋へ戻って、いよいよ宴会議開始。超多忙のNさんが最後にやってきた。今年のGamelan Aidの予定を中心に話はあっちへ行ったり,こっちへ行ったり。ガムランを輪に緩やかに結びついた人たちが共有できることもなんとなく見えてきた。ちびりちびり飲みながら2時近くまで続いた宴会議の間中,諏訪さんは速記者みたいにキーボードを叩き続けた。馬鹿話もいっぱい入っているんだろうな。どこかで公開されるんだろうか。 

2月22日 
朝の勤行はスルー。自宅にいると6時過ぎ、ガバッと起きたブナに「パパ、ご飯作ってや!!」と、叩き起こされるので・・・。冷えきった宿坊で,分厚くて重たい布団で寝るのは本当に心地いい。8時からの朝食をいただく。月曜日なので,忙しい社会人たちが帰っていく。残ったのは,ヒマ人のビンボーゲージツ関係、Hさん、Kさん、Hさんと僕。ゆっくり散歩に出かける。去年は奥の院へ行ったので,今年は金剛峰寺の方へ。ゆるんだ土の道につく足跡を楽しみながら進んでいく。空気が澄んでいく。 

視界が開けると,朱色の根本大塔が目の前に。

シュリン、シュルリン、シュルシュル 

と、軽やかなささやきが聞こえる。なんだろう。上を見上げると、屋根の4角に鐘のようなものがぶら下がっている。 



さらに上空を見上げると、青空に、雲がすごい勢いで流れている。塔のてっぺんのアンテナのような部分、相輪にも小さな鐘がたくさんぶら下がっている。



はるか上空なのに,耳元でささやいているように聞こえる。塔の正面に回って、手を屋根の形に沿わせてみる。相輪の上まで伸ばして,ついでに伸びをする。背骨が伸びて,塔とすこし一体化できる。 

シュリン、シュルリン、ギイ 


時折,我が家の小桜インコのパリノが鳴くように,ギイと、つっかえる。これは、どこかで聞いた音ではないか。ああ、そうか。「サンズイ」の音だ。僕が進めているダンスと音楽が一体化するプロジェクト「サンズイ」の中で聞こえた音だ。風に揺らぎ、動き,音が生まれる。そこにあることを、感じる。すべてを受け入れる。ただそれだけ。 

前夜の宴会議中、Kさんが突然、「誰かおるで、ここに。」と、自分の脇を指差した。小さな話し声が聞こえると。耳を澄ますと,確かに妙な音がいろいろ聞こえた。そして、時折,寸断するような音も。「魔法瓶がなってるんちゃうん?」ってことでその場は片付いた。 

ああ、この音だったのか。地図で確認すると,ちょうど1キロくらい離れているけど、きっとこの音だろう。広い境内には,僕ら4人しかいない。時折,低く響く読経の声、笛の音も聞こえる。標高900メートルの霊場高野山,きっと相輪の鐘,読経の響きのほかにも、いろんなささやきが風に乗って飛び回っていたのだろう。 



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