2013年8月27日火曜日

鳥の劇場 喫茶店のダンサー (12/08/2010)

8月11日 
大阪大学コミュニケーションデザインセンターの本間さんの新車アルファロメオで、奈良養護学校へ向かった。体育館へ入ってくと,たんぽぽの家のスタッフがほぼ全員そろっていた。中央には,鳥の劇場の中島さんとおぼしき人が腰に手をおいて,細身のからだに白いシャツを来て、眼鏡の奥に微笑みをたたえて立っていた。どうやら、5人ほどのグループに分かれて,喫茶店の小芝居をしているようだった。木曜日のガムランワークショップに参加している小松さんが、寝転んで熱演しているところだった。後で聞くと,「喫茶すべる」という店で,常連以外はすべって転んでしまう店なのだと言う。なんとそそる設定か。 

喫茶店の小芝居に続いては,泥棒学校という加古里子さんの絵本の一部をグループごとに演じるというワーク。たんぽぽのスタッフは,自らも歌を歌ったり,芝居をしたり,美術をしたりという多才な人が多い。その一癖も二癖もある面々が、ちょっと斜に構えたり、混ぜ返したりしながらも,中島さんの言うことを聞いて、エンジョイしていた。集団でなにかを作り出す喜びなのかな。自分を見つめ直すダンスのワークショップとは違う雰囲気だった。犬走りの上の窓は大きく開かれ,黒いカーテンが気持ち良さそうに舞っていた。みんなで、中島さんのお土産の鳥取のスイカを食べた。 

昼休憩を挟んで、5時間近いワークショップを終えて,たんぽぽの家へ戻った。2階のミーティングルームでホットコーヒーをいただく。メンバーは,たんぽぽの家の播磨さん,森下さん、井尻さん,北田さん、鳥の劇場の中島さん、斉藤さん,村上さん,演劇人の森永さん,そして、本間さんと僕。「言語から身振りへ」研究会が主催して,演劇のワークショップを行い,そしてそれについて振り返るというのが、今日の趣旨。 

この日のワークショップには、いくつかの明確な意図があった。見えないエネルギーのやりとり、キャラクターを演じることによって普段と違った生き生きとした存在になる,からだを通して人に読ませる表現にチャレンジする,あるいはその表現を読むことにチャレンジする、などなど。その意図通り,ワークショップの場は、生き生きとした場になった。しかし、研究会が目指すことは、その先のことである。プロのアーティストが参加する限定されたワークショップをより多く人に伝えることができるのかどうか,一見ケアと関係の無いように思えるアートが実はケアと深く結びついているんじゃないかということを探る,などである。 

夜の高速道路でアルファロメオを運転させてもらった。セミオートマの癖を探りながら,本間さんといろいろと話した。中島さんは、フィクションが作った集中の共有を観客に見せるのが演劇であり,そのフィクションや物語を作るには,人のからだを読ませたり、読んだりするのを前提とする意味や言葉の共有が必要であると。では、ダンスはどうなのかと。僕も,目に見えにくいものを観客と共有することは、ダンスにおいて大切なことだと思う。それを共有するためには,ダンサーの自然なからだの動き、あるいは感覚が必要となる。特に、重力やからだの構造に即したそうでしかありようのない動き。ここから外れて行くと,見る方はついて行くのが困難になって行く。ダンサーが勝手に動いて行く感じ。表現者と観客が持っているなんらかの共有をよりどころにしているのは、共通する部分である。また逆に言えば,意味や言葉の芸術と動きや感覚の芸術といった違い。ダンスには意味や意図が不明瞭なことも含まれる。時には無意識やトランスも含まれる。簡単に断ずることは出来ないけれど,僕が湯気と踊ったり,言葉が通じにくい人とダンスすることに喜びを感じるのは,そんなことが関係しているのかもしれない。車は渋滞を抜けて,本間さんのマンションに到着した。 

8月12日 
明け方、猛烈な風と雨で目が覚めた。強烈なシャワーに,家も森も田んぼも洗われるようだった。警報が出たので,いろいろと予定が変わった。明日会う予定だった砂連尾さんに電話すると、今日でも会えるというので、豊中の丘の見える喫茶店で会った。砂連尾さんは、舞台で大掛かりなセットや照明の中で作品発表をすることに違和感を感じているようだ。それで、僕がやっている炊飯器の湯気でダンスしたりするのに興味が湧いているとのこと。僕が,どうしてそんなことをするようになったのかを、考えながらゆっくりとしゃべった。自分自身も、整理されたり,発見したりすることがあった。 

砂連尾さんは、現在伊丹のアイホールでダンスの制作をしているとのこと。そこに参加している人に,一度ワークショップをして欲しい,という依頼だった。それから、その後も、なにか一緒にやりたいね,という話。あせらず、何度も会って話をしたり,からだを動かしたりしてすすめたいなあ、と。

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