2012年12月28日金曜日

センリョウの実 坂道を下っていくダンス (2006/12/27)

家の前が細長い坂になっている。国道から鋭角に上り、防火水槽のところで90度左へ曲がって、更に急になって30メートルほど上っている。アスファルトではなく、白いコンクリートの舗装で、滑らないように線がいっぱい引いてある。坂の左側に、センリョウの木があり、直径5ミリほどの赤い実が鈴なりになっている。その赤い実を20個ほど取り、坂の上から転がしてみた。 まず、最初1個を坂の上に置くと、なんとそこに止まってしまった。軸が付いており、それが支えになってしまったのだ。2個目をその手前に置いてみた。 テンテン、テケテケ、スッテンテン、 と、軽快に弾んでいく。 コンクリートに線が引いてあるので、そこで弾みがつき、どんどん転がっていく。ほとんどの実は、防火水槽の付近まで転がっていく。調子のいいものは、防火水槽のカーブもうまく回り、もっと遠くまで転がっていく。しかし中には、弾みがつきすぎて、溝に転落したりする実もあれば、溝に落ちる寸前で、落ちている木の枝に当たって戻って来る、運のいい実もある。軸が残っている実は失速して、止まってしまったり、あるいは、どうしても行ってはいけない方へと曲がっていき、小石の下へ潜り込んだりする実もある。また、なぜか左へ左へと行き、溝を越え、家の玄関へやって来る実もある。 同じところから出発するのに、ちょっとしたきっかけで行き先が大きく変わっていく。当たり前だが、不思議である運命なんて。僕はひとつずつの運命を確認しながら、坂を下って行った。一番遠くまで行ったのは、40メートルも先だろうか。集めた実を両手に持って坂を再び上った。軸が支えになって止まった最初の実の上で、両手を開いた。    テケテケテケ、    テケテケ、   スッテンテン タカッ、タカッ、  トトトトトッ、    コロコロコロ、 コロリン、  コロンコロン、   トッ、トッ、  ストン、ストン、ストン、 賑やかなダンスになった。 今度は自分で転がってみた。靴を脱いで、坂道に立ってみる。つんのめらないように自然と後ろに重心がかかる。一歩が踏み出せない。踏み出せない感じをじっくり感じてみる。やがて、ゆっくりと左足へ重心を移し、右足をゆっくりと上げてみる。背骨でバランスを取る。右足を着くか着かない微妙な辺りに持っていく。そうっと右足をつける。力がそこへ流れていく。 足の指、足首、膝を緩めて、力の働いてくる方向を感じる。かかった力を無理のない方向へと伝えていく。背骨で重力を感じながらバランスを取る。ゆっくりゆっくり坂を下っていく。だんだん早くなってもいいし、だんだんゆっくりになって、止まってもいい。成り行きに任せる。自分で動かないようにする。 坂道を下っていくダンス。意外と難しい。センリョウがセンセイである。

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