2013年1月11日金曜日

うずらギャラリーで初展覧会 (2007/10/17)


今日は京都三条寺町のうずらギャラリーと同時代ギャラリーへ行ってきた。今日から、僕の展覧会が始まったのだ。たんぽぽの家が主催するひと・アート・まち京都のプロジェクト、アート・リンクで、僕と伊藤愛子さんが作品制作を依頼されていて、その映像の展覧会。 

エイブル・アート・リンク2007 
10月16日(火)~28日(日) 
12:00~19:00(最終日は17:00まで) 
会場:同時代ギャラリー うずらギャラリー 

http://popo.or.jp/new/detail.php?cid=141 

このサイトでは分かりにくいが、愛ちゃんと僕が8月からくり返してきた即興のダンスワークを山田千愛さんが映像にしてくれて、ふたつのギャラリーで上映しているのだ。特に、同時代ギャラリーの横にあるうずらギャラリーは隠れ家的な洋館で、暖炉の上や、たくさんの小さな小窓や、扉の長いガラスに、映像が仕掛けられている。 

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とってもきれいでかわいい作品になっています。便利なところにあって、無料なのでお気軽に見に来て下さい。来週には、パフォーマンスもあります。これもなんと無料です。 
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伊藤愛子×佐久間新 
ゲスト:ウォン・ジクスー 
10月26日(金)14:00~(予定約15分) 
          17:00~(予定約50分) 
10月27日(土)12:00~(予定約50分) 
会場:京都文化博物館別館・中庭ウッドデッキ 

先週、クレムスから帰る途中、アムステルダムでのトランジットや機内で、イベントのために原稿を書きました。この間から長くて、旅先と現在が混じった複雑な日記を書いていてすみません。 

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アートリンクに寄せて 

2004年秋、スペース天で始めて愛ちゃんと出会った。お互いに戸惑いながらも、なんだか波長の合う予感がした。僕が口の下に手を添えて、 

ふうっ 

と風を送ると、彼女も同じ格好で、 

ふうっ 

と風を送り返してくれた。二人の間に穏やかな空気が漂っていて、それをお互いになぜることができるようだった。その日の日記には、喋るように踊る女の子と出会った、と書いてある。2005年に上演した「さあトーマス」に向けての練習が始まった時のことである。 

大阪の築港赤レンガ倉庫で行われた「さあトーマス」の初演の時、出演者も観客も何が起こるか分からない混乱とカオスの中で、愛ちゃんが不意に背後から僕のかぶっていた赤い帽子をスポッと抜き取った。不安やらホコリやらが舞い上がる中で、一瞬、二人だけのダンスのシーンが現れた。その後、「さあトーマス」は、大阪、東京、徳島、滋賀、奈良で7回の公演が行われた。公演を重ねる内に、愛ちゃんと二人でじっくり踊りたい、という気持ちが膨らんでいた。そんな折りに、たんぽぽの家の岡部太郎さんから、今回の企画に出ないかと誘われた。 

話が決まった後、映像担当の山田千愛さんも一緒に、奈良公園へお弁当を持ってピクニックに行ったり、伊藤家へおじゃまして、そうめんをごちそうになったりした。そして、ようやく二人のダンスワークを開始した。ダンスワークは、特に取り決めをせず、僕と愛ちゃんの気の向くままにダンスをすることにしたが、いつも大体50分から1時間くらい途切れることなく続いた。 

ダンスワークの2回目の時に、山田さんがスクリーンを使うことを提案してくれた。3回目以降は、スクリーンを張り、そこへ光を投射する前で、ダンスした。その次の回は、二人の影の映像がスクリーンに投影され、その前でダンスした。そして、その次の回は、二人の僕と二人の愛ちゃんの影がスクリーンに投影され、その前でダンスした。普段でも、鏡ではなく、影を見ながら踊るのは、自分でも他人でもない何者かと踊るようで好きだったが、過去の影と踊るのは不思議な感じだった。 

僕たちのダンスワークは、気持ちをリラックスさせて、周りの人や物、音、風、光、影をしっかり感じて、身体のおもむくままに動くことを大切にしている。このおもむくままに動く、というのが意外に、というか実に難しい。木が風にそよぐように、クラゲが海に漂うように、鯉が悠然と池の中を回遊するように、白鷺が杉の梢で佇むように、馬が鼻に風を受けて走り出すように、靄が谷にたちこめるように、月が山の端から上り始めるように、そんな風に動けたらどんなにいいだろう。 

たんぽぽの家にやってくると、愛ちゃんが僕を発見して、走ってやってくる。満面の笑みで、気持ちが迫ってくる。この感じがすごくいいのだ。気持ちが先行して、それに手や足が付いてくる感じ。ビデオカメラの前で、コーヒーを飲んで下さいと言われれば、多く人はコーヒーカップにどうやって手を伸ばそうか、戸惑うだろう。自然に振る舞えないし、コーヒーを飲みたいという気持ちも湧いてこないだろう。でも、本当に喉がカラカラに渇いていれば、水滴の付いた冷たい麦茶のグラスに誰でも自然に手が伸びるだろう。自分の中に湧き上がる感情に耳を澄まし、動き出す身体をそっと後押しする、そんな風に動けたらどんなにいいだろう。 

最初の出会い以来、口の下に手を添えて風を送るダンスは、愛ちゃんと僕の挨拶のようになっていた。ダンスワークが進む内に、愛ちゃんは新しいダンスが作りたい、と言い出した。二人で、ふうっ、ふうっ、ふうっとたくさんの風を吹き出して、その風をいっぱい漂わせよう。漂う風を震わせて、少しずつ揺すって波にして、それをかき混ぜて大きな渦を作ろう。大きな渦を作ったら、周りのみんなを巻き込むようなもっと大きな渦を作ろう。愛ちゃんの気持ちが飛んでいって世界を満たせば、どんなにいいだろう。 

即興のダンスを踊る時、僕は、周りの環境や他者の動きを鋭敏に感知し、次の展開をめまぐるしく考える。 

没入する 
そこから抜け出し、上から俯瞰する 
緊張をひらりとかわす 
他者と共振し、大きな渦を作る 
渦をスパッと断ち切る 

そんな自由自在な存在になれれば、最高だろう。

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