9時過ぎ、ホテルひさご出発。えずこホールに近い大河原にあるホテルから南へ。車の中で、前日の打ち合わせ通り、我々3人はフィールドワークを行っている博士として、保育園児に接することを再確認。ミュージシャンやダンサーとしてではなく、研究者及び観察者に徹しなければならない。やがて、右手に雪を抱いたゴツッとした山があらわれた。蔵王である。20分ほど走ると、蔵王に程近い白石市立深谷保育園に到着。
園長先生が迎えてくれた。打ち合わせもそこそこに、早速ホールへ移動。初日は、野村さんが主導、佐久間がアシスタント、ヒューさんが撮影である。
野村さんが輪になった子供達に、
「ピアノに触ってきて。」
と声をかけると、ひとりずつ立って、ピアノに近づいていった。
スッと行く子もいれば、ゆっくり行く子もいる。真ん中付近の音を叩く子いれば、力強く一番低い音を叩く子もいる。そうすると、なぜか大爆笑!みんな一音ずつ叩いていく。しかも白鍵ばかり。だいぶすると黒鍵を叩く子があらわれた。
「じゃあ、ふたりずつやってみよう!」
仲良くする子もいれば、喧嘩する子も。音はさっきより複雑になっていく。そのうち入り乱れ始めて、大混乱。子供達がピアノで遊び始める。
一旦仕切って、2列に並ばせる。
ピアノ、スネアドラム、木琴を順番に叩きながらリレーをした。みんな楽しそうに楽器を叩いている。そのうちに待っている子に、タンバリンや鈴も渡して、自由に叩いてもらう。段々と賑やかになってくる。狂喜乱舞してピアノを弾いている子供もいる。ピアノのまわりで鬼ごっこが始まる。
ここまでで終了。
先生達と打ち合わせ。
元々、耳の具合が悪かった子が、最近、耳の治療をして、今日、本当に楽しんで音を鳴らしていたのが印象的だったと、園長先生が感想を聞かせてくれた。
えずこホールの水戸さんと日高さんの案内で、うーめんを食べに行く。油を使っていないそうめんで、暖かくして食べる。関西だと、そうめんの暖かいはにゅうめん。白石の名物なのだ。第一候補の店が閉まっていたので、第2候補の店へ。牡蠣の天ぷら入りうーめんを食べる。何がどうなのか、なかなか感想を言うのが難しい料理だが、おいしかった。
午後からは、そのままホールへ向かい、午前に撮った映像を分析することになっていた。この作業が今回のプロジェクトのミソである、とあとで分かった。3人の博士が真剣になって、子供達が遊んでいる様子を観察する。
「今のところストップ。もう1回。」
と、気になったところを見返しながら、メモを取る。そして、意見交換。子供達のピアノへのアプローチの仕方に、テクニックを発見する。
例えば(番号はテクニック番号)、
3) 一音弾いて観客の反応を見る
7) 一本指で真上からゆっくり鍵盤に向かって下ろして、鍵盤に触りそうなところで、 熟考して、一音をやさしく弾く
15) ペダルを試行錯誤してから、3人になる。奏者1:高音、奏者2:中音、奏者3:低音
1:奏者1:高音クラスター
2:奏者3:低音のリズム
3:奏者1:高音の応答リズム
4:奏者2:中音のやさしいクラスター
などなど、次から次へと新しいテクニックが発見される。
また、ピアノへの取り組み方としてのアプローチや、音楽やダンスに関する疑問(クエスチョン)も収集することが出来た。真剣にやっているのだけれど、新しいテクニックを発見するとおもわず3人で大爆笑してしまうほど、楽しい分析だった。はじめてということもあり、気付くと5時間も経っていて、夜の大人達とのワークショップの時間が迫っていた。
おにぎりを頬張ってると、ヒューさんがピアノを弾き始めた。早めに来ていたワークショップ参加者もそこに加わった。思わず、僕の身体は動きはじめた。本当に気持ちがいい。音も身体も弾んでホールを駆け回る感じ。しばらく動き回っていると、腰に違和感を感じたので、ストップ。あれっ、ちょっとヤバイかな・・・。
夜の参加者がやって来る。野村さんとヒューさんは、何度もえずこホールでワークショップや作品づくりをしているので、みんなと再会を楽しんでいる。僕は初対面なので、ちょっとまだ慣れない感じ。
午後に収集したテクニック1)~27)とアプローチ1)、2)を、みんなと試行錯誤しながら試みた。
まだ、僕も含めてみんな少し硬い感じ。10時頃までワークショップは続いた。
ホテルへ戻る。畳の部屋のなので、ストレッチがやりやすい。が、今日は腰に違和感があって、ストレッチもままならない。明日の保育園でのワークショップでは、リーダー役なので、あれこれシミュレーションしながら考える。なかなか寝付けなかった。
2007年に、やっぱり野村さんと一緒に行ったイングランドのパドック小学校でワークショップをした時のことを思い出した。僕はヒューの友人のボブに家に滞在した。娘のリアの2階建てベッドに寝転がって、翌日のワークショップのアイデアを考えながら、窓の外の教会の影を見るともなしに見続けた。
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