2013年1月7日月曜日

即興と時計 (2007/10/12)

9月24日から、イギリスとオーストリアへ旅をしました。イングランド、スコットランド、そしてオーストリアのクレムスで、ワークショップとコンサートと即興パフォーマンス三昧の日々でした。少しずつ日記で振り返りたいと思っています。 

24日 
ある公募に応募する書類を作成していて、完全に徹夜だった。書類は関空のベンチで完成し、空港の郵便局から郵送した。イギリスへ一緒に行く野村誠さんと待ち合わせるのも忘れていた。ベンチで待っていると、茶色のコートを着た野村クンが現れた。 

イミグレーションを越えて、デューティーフリーショップの前を歩いていて、ふと上を見ると、ブナとイウィンさんがガラスの向こうで手を振っていた。最後まで見送ってくれてありがとう。 

アムステルダム行きのKLM機内で、先日の碧水ホールで行われたワンデーガムランピクニックの話になった。 

即興の前、舞台監督のHIROSさんから、30分、最長でも40分で即興を終えて欲しいとリクエストがあった。僕は、舞台横の壁には時計があるし、まぁ大丈夫ですよ、と答えた。即興は、僕と鈴木悦久さんの場面から始まった。そこに寺内大輔さん、野村クンも入って、即興は進んでいった。途中で、子供達が入りたそうだったので、少しちょっかいをかけてみた。小さなやりとりが段々発展して、子供達が舞台で賑やかに暴れ始めた。僕は、少し時間が気になってきた。子供達とダンスしながら、時計を見ようかと思った。客席に背を向ける場面があったので、何度も時計を見ようと思った。でも見られなかった。 

という話を僕がすると、野村クンは、 
僕は、時計を見る方の側だからねぇ、 
とニヤニヤしている。 

僕は、「桃太郎」でも、「さあトーマス」でも、最前線でホコリまみれになって、ヨダレまみれになって、ダンスするタイプだ。入り込んで、没入する感じ。そこで時計を見てしまうと、なんだか自分がデートの最中に帰りを気にする女の子になったようで、お客さんをがっかりさせる気がするのだ。 

でも、そこからいろいろ考えてみた。 
「さあトーマス」にも出演したたんぽぽの家の愛ちゃんは、僕と二人で即興ダンスの練習をしていても、時計を見ることがある。 
大相撲は、いつも6時前に終わる。 
ガムランの演奏は、長さは自由に変えられるが、やはり適当な長さがある。 
ジャワのラジオ局のライブ録音では、ガムラン演奏は秒単位で時報に合わせて終了させられる。 

僕自身、ジャワ舞踊を踊っている時は、冷静沈着で、視線も不動でいたってクールである。時間のことは、特に考えない。でも、どうしても必要なら、時計を見られる気がするのだ。目線は向けなくても、視野の端で時計を確認することはできるような気がする。そうしても、集中力がとぎれないような気がするのだ。 

2年前、「桃太郎」の第5場を初めて上演した。最後の場面で鬼のソロダンスをした。第4場でのカオスを経て、あらわれた空気の中でソロを踊るのは難しいが、とても重要なシーンだ。練習の時、何度もダメ出しが出た。野村クンからも、鬼は踊ってはいけない、という厳しいダメ出しが出た。 

本番前日のリハの時、面が半分割れて、口がむき出しになった。半分飛び出した自分と鬼が同居して、自分なりにとてもいい感じでダンスできた。ソロダンスを30分近く続けた。しかし、長すぎるという、ダメ出しが出た。それで、本番の時、時間のことに気が取られ、すこし没入することが遮られた。それでも、入り込めない自分と格闘しながらダンスを始め、やがてダンスがうまく流れ出したところで、ちらりと時計を見た。 


即興のダンスを踊る時、僕は、周りの環境や他者の動きを鋭敏に感知し、次の展開をめまぐるしく考える。思考と感じることの共存。重力に身を任せる自然と感情のほとばしりから生まれ出る動きとの共存。 

没入する 
そこから抜け出し、上から俯瞰する 
緊張をひらりとかわす 
他者と共振し、大きな渦を作る 
渦をスパッと断ち切る 

そんな自由自在な存在になれれば、最高だろう。 

アムステルダムでトランジットし、僕たちは再びKLM機に乗り、マンチェスターへ向かった。徹夜明けだったが旅で興奮しているのか、目が冴えたまま、現地時間18時40分にマンチェスターに着いた。ここから電車に乗り換えて、目的地のハダスフィールドを目指した。長い旅の長い一日目はもう少し続く。 

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